寺下の仏像／The Buddhist statue of Terashita

寺下観音には、観音堂に祀られている、僧・行基の作と伝えられる寺下観音像のほかにも、仁王像、西国三十三観音像が祀られています。

寺下観音像

寺下観音像と脇士（左：毘沙門天像、右：不動明王像）

寺下観音堂には、神亀（じんき）年中（724年～729年）に大僧正・行基（ぎょうき）（天智天皇7年（688年）～天平21年（749年））が作ったと伝えられる観世音菩薩像（高さ約65cm）と、脇士（きょうじ／わきじ）として毘沙門天（びしゃもんてん）像、不動明王（ふどうみょうおう）像が収められています。
脇士とは、仏のそばに控え、仏を補佐するもののことで、仏像においては本尊の両脇に置かれます。

毘沙門天は多聞天（たもんてん）・北方天とも呼ばれ、もとはインド神話の神だったものが、釈迦（しゃか）（仏陀）が生まれた際に帰依（きえ）し、仏法を守護する天部（てんぶ）（神）となったものです。帝釈天（たいしゃくてん）に仕え、須弥山（しゅみせん）（世界の中心にそびえるとされる聖山）の四方を守護する四天王の一尊で、北倶盧洲（ほっくるしゅう）を守護しています。また、七福神の一尊でもあります。

不動明王は大日如来（だいにちにょらい）の化身であるとも言われ、五大明王の中心となる明王です。明王は密教における尊格・称号なので、密教を基盤とする宗派を中心に用いられています。

仁王像

寺下観音の仁王像

寺下観音堂の前には仁王（におう）門があり、一対の仁王像が収められています。
作者、制作年は不明です。

仁王（二王）は金剛力士とも呼ばれ、仏敵を退散させる武器「金剛杵（こんごうしょ）」を持つ天部（仏教における神）のことで、口を開き怒りを顕（あら）わにした「阿形（あぎょう）」と、口を閉じて怒りを内に秘めた「吽形（うんぎょう）」の2体で対になっています。

西国三十三カ所観音霊場

西国（さいごく）三十三カ所観音霊場とは、和歌山県の那智山寺から始まり、大阪府、奈良県、京都府、滋賀県、兵庫県そして岐阜県の華厳寺までの近畿周辺、2府5県に点在する33カ所の観音信仰の霊場です。
この西国三十三カ所の観音巡礼をすることで、あらゆる罪業（ざいごう）（苦しみをを受ける原因となる悪い行為）が消滅し、極楽往生（ごくらくおうじょう）（死後、極楽浄土に生まれ変わること、安らかに死ぬこと）できるとされています。

33という数字は、観世音菩薩（かんぜおんぼさつ）が衆生（しゅじょう）（命あるすべてのもの）を救う際に、33の姿に変化するとされていることに由来し、観音信仰では非常に重要な数字です。

寺下観音の境内には、西国三十三カ所観音霊場の観音様を模した観音像が並べられています。
これは、寺下観音を参拝することにより、あわせて西国三十三カ所観音霊場を巡ったことと同じ功徳（くどく）を受けられるようにとの便宜がはかられたものです。